不法滞在している外国人と結婚できますか?

自分が好きな人と結婚することは日本国憲法で認められた権利であり、誰もこの権利を侵害することはできません。ただし、結婚したからといってすぐにビザを取得できるわけではありません。

不法滞在している外国人と結婚し、一緒に日本で暮らすためには、主に二つの方法があります。①出国命令を受け1年後に配偶者ビザを取り再入国させる。②在留特別許可を受ける

①出国命令を受け1年後に配偶者ビザを取り再入国させる。

【出国命令制度とは】

  • 不法ふほう残留ざんりゅう(オーバーステイ)とうしている外国人がいこくじんは、収容令書しゅうようれいしょによる収容しゅうよううえ退去強制手続たいきょきょうせいてつづきがとられ、日本にほんから強制きょうせい送還そうかんされることになっています。また、強制きょうせい送還後そうかんご、5年間ねんかん事情じじょうによっては10年間ねんかんとなる場合ばあいもあります。)は日本にほん入国にゅうこくすることはできません。
  • しかし、不法ふほう残留ざんりゅうしている外国人がいこくじんが、帰国きこく希望きぼうしてみずか地方出入国在留管理局ちほうしゅつにゅうこくざいりゅうかんりきょく出頭しゅっとうした場合ばあいは、下記かき2の要件ようけんたすことを条件じょうけんに、出国命令しゅっこくめいれいという制度せいどにより、収容令書しゅうようれいしょにより収容しゅうようされることなく出国しゅっこくすることができます。出国命令しゅっこくめいれいにより出国しゅっこくしたときは、日本にほん入国にゅうこくできない期間きかんも1年間ねんかんとなります。

【出国命令の要件】

  1. すみやかに出国しゅっこくすることを希望きぼうして、みずか地方出入国在留管理局ちほうしゅつにゅうこくざいりゅうかんりきょく出頭しゅっとうしたこと。
  2. 違反いはん不法残留ふほうざんりゅうのみであること。
  3. 窃盗せっとうその一定いっていつみにより懲役刑ちょうえきけいなど判決はんけつけていないこと。
  4. これまでに強制きょうせい送還そうかんされたり、出国命令しゅっこくめいれいにより出国しゅっこくしたことがないこと。
  5. すみやかに出国しゅっこくすることが確実かくじつであること。

つまり、外国人配偶者が上記の出国命令の要件を満たしている場合は、自ら出頭し日本から出国すれば、入国拒否期間は1年間となるため、その後は「日本人の配偶者等」などの在留資格認定証明書の交付申請を行うことも可能となります。入国拒否期間が経過したことと在留資格を与えられることは全くの別物であるため、帰国後に在留資格認定証明書の交付申請をしても必ずしも許可されるとは限らないのです。しかも、「日本人の配偶者等」の在留資格を申請する際には2国間をまたいでの婚姻生活の継続性なども審査されることとなるため、日本に居住する配偶者は多大な労力を伴うこととなります。相手国での一定期間の同居が可能であったり、頻繁に渡航できる時間と費用が捻出できればよいのですが、日本で定職についている場合にはこれも難しいことが多く、手紙や電話でのやり取りの他に生活費の仕送りなどの交流が続くだけでは、1~2年で婚姻生活が破綻してしまうケースも少なくはありません。

②在留特別許可を受ける。

在留特別許可とは不法滞在(オーバーステイ)等の外国人に対し、法務大臣の自由裁量によって特別に日本での在留を許可する措置です。在留特別許可になるかどうかは、不法滞在している外国人の家族関係や日本滞在歴のほか、政策等でも影響があります。許可基準ははっきり明示されておりませんが、『在留特別に係るガイドライン』というものが法務省から発表されております。それによると、一般的に申請に有利になりやすいのは下記のケースです。日本人との婚姻は申請に有利にはなりえます。

(1)当該外国人が,日本人又は特別永住者と婚姻が法的に成立している場合(退去強制を免れるために,婚姻を仮装し,又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって,次のいずれにも該当すること
ア )夫婦として相当期間共同生活をし,相互に協力して扶助していること
イ )夫婦の間に子がいるなど,婚姻が安定かつ成熟していること

(2)当該外国人が,別表第二に掲げる在留資格で在留している者と婚姻が法的に成立している場合であって,次のいずれにも該当すること
ア )夫婦として相当期間共同生活をし,相互に協力して扶助していること
イ )夫婦の間に子がいるなど,婚姻が安定かつ成熟していること

(3)当該外国人が,本邦の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)に在学し相当期間本邦に在住している実子と同居し,当該実子を監護及び養育していること

(4)当該外国人が,難病等により本邦での治療を必要としていること,又はこのような治療を要する親族を看護することが必要と認められる者であること

(5)当該外国人が,不法滞在者であることを申告するため,自ら地方入国管理官署に出頭したこと

(6)当該外国人が,本邦での滞在期間が長期間に及び,本邦への定着性が認められること
(7)その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること

これらには許可の可能性が高いというだけで必ず許可になるわけではありません。在留特別許可は明確な基準がありませんが、刑法違反・素行不良、過去に退去強制手続きを受けている場合は許可がかなり難しくなります。また結婚していても偽装結婚では在留特別許可は認められません。しっかり書類を準備して申請書を提出した方で早くて6か月ぐらいの場合もありますが、審査が長くなり1年~2年以上になる場合もよくあります。

在留特別許可までの流れ

必要書類(身分を証明するもの・婚姻を証明するもの)を収集作成します。
出入国在留管理局への出頭
入国警備官による違反調査
不法滞在となった経緯を中心に本人に関す るあらゆることや配偶者との経緯など、入国してからのことをこと細かに調べます。
仮放免手続きと行動範囲拡大願い
必要書類をそろえ、指定された日に 出頭、仮放免の許可をもらいます。場合によっては仮放免保証金が 必要となることもあります。通勤や通院、通学などの理由がある場合 、行動範囲拡大願を出します。
違反調査仮放免許可後の事情の変化等について聞かれます。 
入国審査官の違反調査仮放免許可後、数週間から数ヶ月して、その後の事情の変化等について聞かれます。 そして、不法残留者であり、退去強制事由に該当するとの認定通知書が渡されます。その時に口頭審理の請求をします)
特別審理官の口頭審理
数週間から数ヶ月して、口頭審理への出頭の連絡があります。これで退去強制事由にあたるとの違反判定が出されることになります。そこですぐにその場で「異議申出書」を提出して法務大臣の裁決を求めるようにします
法務大臣の裁決
結婚生活の安定性があり善良な市民として今後の日本在留が期待できるかということと、生活状況や素行、経歴や家族状況などを総合的に判断されます。

在留資格取得法務大臣の名で許可が出ると、指定された日に入国管理局に出頭し、在留特別許可の証印、在留資格や在留期間の条件がパスポートに記載されます。これにより、外国人配偶者は「日本人の配偶者」としての在留資格で日本に在留することができるようになります

※出頭から相当長い時間を経て、最後の法務大臣の裁決で認められた場合に限り、取得することができるのです。入管に出頭してから取得まで早くて半年で場合によっては1年以上の年月を要することもあるようです
※法務大臣の裁決の結果、在留特別許可が認められないと、退去強制処分、国外へ送還されます。場合によっては収容されます。