外国人の親族を会社役員にするための要件

1.親族を株式会社の役員にする場合

株式会社の役員になるためには出資は必要ありません。株式会社は所有と経営の分離という原則があるため、所有は株主、経営は役員がします(ただ、中小企業やベンチャー企業の場合は、株主が役員をしている場合もあります。)つまり、株式会社は、出資していない親族を役員にすることができます。ただ、出資していない役員が、経営管理ビザを申請できる要件としては、経営や管理経験が3年以上ある必要があります。さらに実際、経営や管理を行うことが前提です。なお、「日本人若しくは永住者の配偶者ビザ」、「定住ビザ」、「永住ビザ」で、日本に居住している外国人は、経営管理ビザを取得せずとも、経営や管理に従事することが可能です。

2.親族を合同会社の役員にする場合

合同会社の役員になるためには出資が必要です。業務執行者員(株式会社の取締役に相当)になる場合は、必ず出資しなければなりません。既存の社員(株式会社の株主に相当)から持分の譲渡をしてもらう方法でも出資とみなされます。合同会社では、出資していない親族を役員にすることができません。出資額が500万円以上あれば、経営や管理経験がなくても、経営管理ビザの申請が可能です(ただし、実際、経営や管理を行うことが前提です。)。なお、「日本人若しくは永住者の配偶者ビザ」、「定住ビザ」、「永住ビザ」で、日本に居住している外国人は、経営管理ビザを取得せずとも、経営や管理に従事することが可能です。

3.親族に報酬を支払うことにより節税につながる

親族を役員にすることで得られるメリットはいくつかあります。役員報酬を親族に支払うことにより、それが経費となり、節税につながります。役員報酬額の設定は、親族が社会保険の扶養から外れても良いかどうか、役員を常勤とするか非常勤とするか、気をつけるべき点はあります。また、役員報酬を過大に設定すると、税務調査の際に否認される可能性があります。もちろん、役員の実態がないにも関わらず、報酬を設定することはNGです。

4.親族を役員とした上で経営管理ビザの申請する

【出資をする親族が経営管理ビザを取得するための要件】
経営者として経営管理ビザ取得するには、①事業所が日本国内に確保されていること、②一定以上の事業規模(常勤職員2名以上又は資本金500万円以上)を満たすこと、③事業の適正性・安定性・継続性を示せること、④事業の経営に実際に従事することの4つの要件があります。

①事業所が日本国内に確保されていること
経営管理ビザ取得時に、日本国内に実際のビジネス活動が展開される実体のある事業所を会社名で設置することが必須条件です。事業所の要件としては、下記2つの要件を満たしていることが求められます。経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていること財貨及びサービスの生産又は提供が、人及び設備を有して、継続的に行われていること


②一定以上の事業規模(常勤職員2名以上又は資本金500万円以上)を満たすこと
経営管理ビザ申請者以外に日本国内に居住する2名以上の常勤職員(日本人・特別永住者・永住者・定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等)を雇用して経営する必要があります。常勤職員とは、この会社の業務を行うために継続的に置く職員を指し、職務や責任が決められていること、職務に応じた給与を設定する必要があります。勤務形態も週5日以上、週労働時間30時間以上の一定の勤務計画の元での所定時間の勤務が必要です。そのため、パートタイマーは該当しません。また、雇用契約形態も原則直接雇用が求められ、在籍出向、派遣、請負形態での勤務は、常勤職員とは認められません。
常勤職員2名以上を雇えない場合は、株式会社又は合同会社で起業予定であれば、 資本金の額が500万円以上必要です。ほとんど活用されませんが、合同会社又は合資会社で起業予定の場合においても、出資の総額が500万円以上であることが要件とされます。


③事業の適正性・安定性・継続性を示せること
既存の会社であれば、決算書(損益計算書、賃借対照表)で事業の適正性・安定性・継続性を証明しますが、新規会社の場合は、決算書がありませんので、事業計画書を作成し、証明をします。


④事業の経営に実際に従事すること
役職でいうと代表取締役や取締役、監査役などの役員、いわゆる「経営者」があてはまります。

【出資をしない親族が『経営管理ビザ』を取得するための要件】
出資をしない場合、管理者として経営管理ビザ取得することになります。申請要件としては、上記の経営者として経営管理ビザを取得する場合の①、②、③の要件に加えて、(1)事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院で当該科目を専攻した期間も含む)(2)日本人が従事する場合と同程度以上の報酬設定、(3)事業の管理に実際に従事させることが必要です。


(1)事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院で当該科目を専攻した期間も含む)
事業の管理に従事する場合に適用される基準で、3年以上の事業の経営又は管理の実務経験を有すること及び日本人と同等額以上の報酬を受けて事業の管理に従事することが必要であるとされています。この3年には日本又は外国の大学院で経営又は管理に係る科目を専攻して教育を受けた期間は、「実務経験」として期間に算入されます。したがって、大学院で経営に関する科目を専攻して2年間の修士課程を修了した外国人は、事業の経営又は管理について1年の実務経験があれば要件に適合します。また、大学院において経営又は管理に係る科目を専攻して3年の教育を受けた外国人は実務経験がなくても要件を満たすことができます。
(2)日本人が従事する場合と同程度以上の報酬設定
役員報酬を過大に設定すると、税務調査の際に否認される可能性があります。もちろん、役員の実態がないにも関わらず、報酬を設定することはNGです。
(3)事業の管理に実際に従事させること

業務内容として、「事業の管理」業務以上に、研究開発や営業、マーケティング、生産管理、人材管理などの『技術・人文知識・国際業務ビザ』で認めれる活動のような「実務」に従事している割合や意味合いが強い場合には、経営管理ビザの取得はできません。
なお、この要件は事業の管理に従事する場合であり、経営する場合は3年以上の実務経験は必要ありません。したがって、4年生の大学を卒業したばかりの方であっても会社を設立し経営することが目的であれば経営管理ビザを申請することができます。

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